02-04-2;甲状腺副腎
甲状腺
- 腫瘤の発見頻度は超音波検査では論文の集計によると男性12.8%、女性27.1%。
- 潜在癌の日本の発見率は8〜28.4%。
腫大
- 最大横径20mm、厚さ15mm、峡部の厚さ4mm以上
- 日本では外国に比べヨード摂取量が多い分甲状腺腫大の頻度が高い可能性がある。学校健診では約3%程度に甲状腺腫大を発見できる。
検査
- 一般人口における甲状腺自己抗体の陽性率は10〜17%程度である。
ホルモン剤
- ホルモン補充療法としては、T4製剤を用いるのが原則です。T4を補充すれば体内で活性型のT3に変換されます。最初から活性型のT3をのむと、甲状腺ホルモンの働きはすぐに高まりますが、短時間でまた下がってしまいます。
- もともと身体には、T4を備蓄して必要に応じてT3に変換して使う仕組みがあるので、T4を補充して身体に任せるのがよい。豚の甲状腺から作られる乾燥甲状腺(チラージン)にはT3とT4が含まれますが比率が不安定で、今はあまり使われません。(1)
- T4製剤のレボチロキシンナトリウムは半減期が7日。
潜在性甲状腺機能低下症
- TSH>10mU/L以上であれば症状がなくとも治療が必要との意見もある。(一般住民と比べると心血管死亡リスクが高い)
- 潜在性甲状腺機能低下症のうち33〜55%が10〜20年の間に臨床的な甲状腺機能低下症となる。(2)
橋本病
- 1912年、九州大学第一外科の橋本策(はかる)先生により発見。
- 成人女性の約30人に1人が軽度の橋本病が存在するともいわれている。(有病率は5〜15%とも)
- 明らかな甲状腺機能低下症が発症する例は本症全体の10%程度にすぎない。(2〜3%とも)
検査
- 抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)
- 感度、特異度からはTgAbの方が高い。
治療
- ホルモン補充は原則として少量から開始。特に高齢者に対しては狭心症などの心疾患が出現することがあるので、12.5μg/日といった少量から始める。
- 良性疾患であればTSHが10μU/mlを超えたら、悪性疾患であれば正常値上限より高ければ甲状腺ホルモンを服用(機能低下に使うのと、TSH抑制療法は異なる)
- 起床時か就寝前の空腹時が服用勧め。
妊娠
- 妊娠進行とともにT4の生理的必要量は1.6倍程度に増加する。
甲状腺機能低下症
症状
- グリコサミノグリカン代謝が遅延し細胞間質に蓄積するため、圧痕を示さない浮腫が出現する。
治療
- 薬物治療前に心電図評価(ホルモン補充をすると、代謝が上昇し、心筋において酸素重要が増す。心筋虚血がマスクされていると顕在化し大事に至る)。
甲状腺機能亢進症
抗甲状腺薬
- 投薬中止を考えるのは隔日1錠にして12カ月間TSHを含めて甲状腺機能が正常な場合
- 抗甲状腺治療で寛解しない場合、他の治療(手術、アイソトープ)に切り替えるかどうかの説明を患者にするのは治療開始後2年頃。
- 妊娠初期、殊に妊娠4〜7週を除き、チアマゾール(MMI)を第一選択薬とすることが推奨される。しかし最終的な治療効果はMMIとPTUの間に明確な差はない。一般にはPTUの方がMMIと比べて有意に重大な副作用の発現頻度が高い。
Basedou病
- TRAbが陰性でも約3割は再発し、陽性でも約3割は寛解する。抗甲状腺薬開始後6ヵ月、12ヶ月後にTRAbが高値のものは寛解を望みにくい。
- 抗甲状腺薬の中止の目安としては、抗甲状腺薬1錠隔日服用でも6ヵ月以上、TSH値を含めて甲状腺機能が正常に保たれていれば中止を検討してもよい。
副腎腫瘍
原発性アルドステロン症
- 本態性高血圧の5〜10%は、原発性アルドステロン症による二次性高血圧であるとの報告が相次いでいる(以前は1%未満であると)。
- アルドステロン濃度には日内変動があり、早朝が高値で午後は低下する。できれば早朝、午前10時までに採血することが有用である。
- 低カリウム血症は症例の半数以下。
- 安静度について、安静度が不足でレニンが上昇するのであればPAである可能性は高くない。
- 本態性高血圧と比べると脳卒中が4.2倍、心筋梗塞が6.5倍、心房細動が12.1倍高いと(2005年に米国心臓病学会誌にフランスMillezらの報告)。上記や心拡大があればPAの検索を行う必要がある。
- CTで副腎に確認できる症例は約半数。
診断
- 活性レニン濃度によるスクリーニング;アルドステロン濃度(pg/ml)/血漿レニン活性(ng/ml/hr)比>200 または アルドステロン濃度(pg/ml)/活性レニン濃度(pg/ml)/活性レニン濃度(pg/ml)比>40
- Ca拮抗薬やα遮断薬はレニン、アルドステロンに影響を与えない。
- ACE阻害剤やARBは薬理的にアルドステロン合成を抑制し、レニンを増加させる。もしこれらの内服下でも血漿レニン活性が1ng/ml/hr未満に抑制されていれば、それだけでPAのスクリーニング陽性を強く示唆する。
- β遮断薬はレニンが抑制される。
- ARBやACE-Iを使用して血清Kが3.8mM未満の症例
副腎偶発腫瘍
- 全人口の1.3〜1.9%がこの腺腫を有するとの報告もある。
- 基本的に治療は不要であるが、NIHでは腺腫の大きさが6cm以上であれば手術を勧めている。(実地臨床の上では画像上4cm以上のものは悪性を疑い、生検をせずに外科的に摘出する方法が一般的である。
- 腫瘍径が3cmより大きくなるにつれて悪性の可能性が高くなる。
褐色細胞腫
- 治療抵抗性、発作性、糖尿病合併高血圧の場合に疑う必要がある。
- スクリーニングは随時尿中メタネフリン、ノルメタネフリンで行う。
- CT造影剤はクリーゼ誘発の可能性があり注意。
- 悪性の場合、手術時に診断困難で、後年に遠隔転移や局所再発を認め初めて悪性と判明する場合がある。
- 副腎外性では、ノルアドレナリンをアドレナリンに変換する酵素がないため、主にノルアドレナリン産生性である。
- MRIのT2強調像では高信号が特徴的である。
甘草による偽アルドステロン症
- 甘草に含まれるグリチルリチン酸は、腎臓の皮質集合管細胞において、活性型のコルチゾールをコルチゾンに不活性化する11β-hydorozysteroid
dehydrogenase(11β-HSD2)の酵素活性を阻害するために、コルチゾールが細胞内に集積し、アルドステロンの受容体であるミネラルコルチコイド受容体に過剰のコルチゾールが結合して活性化することにより、Na再吸収、K分泌が亢進して低カリウム血症、高血圧を呈する。